もくもくカメラのブログ

趣味の工作のこと、日常生活の中で見つけたこと・気づいたこと・思ったことを書き留めます。

もくもくカメラのしくみ -その1:立体視の原理-

 奥行きのある物体を立体視する画像技術としては、19世紀の銀塩写真の時代から、ステレオカメラがありました。また、近年は姿を消しましたが、2010年頃には立体画像視聴用の3Dテレビが市販され、同テレビ用の3Dテレビ番組も放映されていました。いずれも、二つのレンズで別々に撮った画像を、両眼で同時に見る方法です。しかし、これ
らの中で使われた撮影方法そのままでは、雲の立体視はできません。対象物までの距離の大きさに対して、通常のステレオカメラや3Dテレビ用ビデオカメラは、両レンズの距離があまりにも小さいからです。

 上記ステレオカメラや3Dテレビは、両眼視差立体視の原理を利用したものです。両眼視差(以下、単に視差と呼びます)とは、両眼でひとつの物体を見た場合に、右眼の像と左眼の像との間に生じる見え方の差のことです。同じ物体でも、近くで見ると視差が大きく立体感は強くなり(図1(a))、遠くから見ると視差が小さく立体感は弱くなります(同図(b))。

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図1 視差と立体感の関係

 視差の大きさを表わす尺度として、輻輳角(ふくそうかく)があります。輻輳角とは、右眼の視線と左眼の視線がなす角度のことで、視差は輻輳角に比例します。

 ところで、たとえ物体が遠くても、2台のカメラを左右に大きく離して配置して、右カメラの像を右眼で、左カメラの像を左眼でそれぞれ同時に観察することが出来れば、その物体を近くで直に見た場合と同様に輻輳角を大きくする、つまり強い立体感をもって観察することができる、と言えます(図1(c))。

 例えば、人の(あるいは通常のステレオカメラの)両眼間隔を7cmとすれば、2台のカメラを7m離せば立体感は100倍、70mなら1,000倍になります。言い換えれば、カメラ同士を70m離すことによって、1,000m先の物体でも、あたかも1mの近距離で見るのと同様な立体感をもって、その物体を見ることができます。

 これが「もくもくカメラ」の原理です。ですから、2台のカメラを好きなだけ離して撮れるように出来さえすれば、どんな雲でも(種類によって高度は数10m~10,000m以上とさまざま)、その3D動画を撮ることができる筈です。