
最初に目にした時、ぎょっとしました。「OPPIO(オッピオ)」って…
イタリア語のoppioは英語ならopium、いずれも語源はラテン語のopiumらしく、意味はアヘンです。アヘンといえば、「アヘン戦争」とか「黄金の三角地帯」、あるいは「薬物中毒」のように、たとえ医薬品としての使われ方を知ってはいても、不穏な負のイメージが勝ります。そんな言葉が、可愛くて素朴な日用品の正面に平然と居座っていることの違和感に、戸惑わずにはいられませんでした。
聞けば、義母が30年ほど前に、当時まだ独身だった妻と二人で旅行したイタリアの土産物屋で買ったとか。このデザイン、確かに可愛いものが大好きな義母が気に入ったのも分かります。しかし自分が感じた違和感、これには一体どう向き合えば良いのか…。
とりあえず、と思って適当にググってみたら、ありました。手がかりらしきものが。その昔、英語で「Medicinal jar(薬の壺)」とか、イタリア語で「Vaso da farmacia(薬局の壺)」と呼ばれる陶器の容器が、薬草入れに使われていた、とのこと。
そうなんだ、と思って「jar opium」とか「oppio vaso」で検索したら、骨董屋とおぼしきサイトに、立派な薬壺がずらりと並んだ写真を見つけました。なるほど。義母の土産物は、こういった骨董品の薬壺を模したものだったんだ、とここまでは納得。
ところがそのすぐ後、ふと目に入ったネットショップサイトの画像に、ふたたびぎょっ。某有名ブランドの香水、その名も「OPIUM」。ファッションに疎い私は、こんな名前の香水があることを、今まで知りませんでした。まさか本物のアヘンは入っていないでしょうけれど。刺激的なコピーが並ぶこの商品のコンセプトは、明らかに「キケン」→「魅惑」の文脈です。私の「危険」→「不安」という発想は、彼らにすれば凡庸の極致といったところでしょう。
香水の一件はともかく、義母の「アヘン」瓶も、要するに彼らにとっての無邪気な遊びの範疇なのでしょう。当初私が感じた違和感は、外国文化との境界付近をとことこ歩いていたら、そこにあった段差に気付かずにつまずいてしまった、そんなところだったのだと思います。
とはいえ、私はこれで良しとします。ものごとの間にはずれがあるのが当たり前、そのずれをどう認識するかが大事の一歩、と改めて心得た次第です。