本テーマの撮影装置が出来たので、今回はその報告です。
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[1]装置の外観
実体顕微鏡の上部にMDF合板製の箱をすっぽりかぶせた形です(写真1)。正面左右の板材に隠れる形で取り付けられた2台のwebカメラが、左右の接眼レンズを覗くようにして撮影します。正面に並んでいるネジ類は、webカメラの位置と姿勢の調整に使います。webカメラはノートPCまたはラズパイに接続します。

[2]ステレオ写真(作例)
3D動画の撮影準備はまだなので、まずは身近なもののステレオ写真を撮影しました(写真2-A、2-B)。道端のエノコログサ(通称猫じゃらし)には1月の今でも穂が残っていますが、こうして見ると種子はすでにほとんど落ちていて、残っているのは毛ばかり、ということが分かります。実体顕微鏡の光学倍率は10倍、実視野は 縦21mmX横15.8mm です。


[3]装置の構造
[3−1]全体構成
本撮影装置は、実体顕微鏡(の架台)に「架台取付部」、「フレーム」、および「カメラ微動機構(左/右)」の3種類のユニットを取り付ける構成です(図1)。

[3−2]架台への取り付け
一体に組み上げられた3種類のユニットは、その名の通り「架台取付部」によって架台に取り付けられ、保持されます(図2)。架台取付部のベース板には実体顕微鏡がはまる丸穴があり、その内径より少し内側にはみ出させる形で4枚のプレート(金属板)が取り付けてあります。これらのプレートを架台と実体顕微鏡の間にはさみ込むことによって架台に保持される、という訳です。

[3−3]webカメラの保持
架台取付部がフレームを、フレームがカメラ微動機構を、そしてカメラ微動機構がwebカメラを、それぞれ保持します。カメラ微動機構の3種類のビス(引張りビス・突張りビス・シフト板固定ビス)でwebカメラの位置と向きを調整するようになっており、これによって接眼レンズを通した撮影が正確に出来ます(詳細は「[5−1]カメラ微動機構のはたらき」をご覧ください)。

[4]製作のプロセス
[4−1]合板部材の切り出し
各ユニットを作るための主材料は、厚さ9mmのMDF合板です(写真3)。

左:t9x300x450(mm) 右:t9x300x600(mm)
切り出しは手ノコで行い(写真4)、切断面はサンドペーパーで仕上げます。

切り出した部材に基本的な穴あけを施したところ(写真5)。ただし、いくつかの穴は組み立ての過程で位置を確定してからの加工になります。また、必要に応じて追加工することにもなります。これらは、手加工によって発生する寸法誤差の大きさが読みきれないことへの対処です。

[4−2]架台取付部の組み立て
架台取付部のメイン部材となる「ベース板」に4枚のプレートを木ネジで取り付けます(写真6-A、6-B)。*1


ベース板とプレート
「フレーム取付材」にザグリを施し(写真7-A)、爪付きナットをシャコ万力で圧入します(写真7-C、7-D)。



フレーム取付材の加工

ベース板にフレーム取付材を木工ボンドで接着します(写真8-A)。硬化後さらに木ネジで固定(写真8-B)すれば、架台取付部ユニットの完成です。実体顕微鏡の架台に載せてみて、きちんと付くかどうかを確認します(写真9)。


架台取付部ユニットの組み立て

[4−3]フレームの組み立て
フレームは架台取付部を土台にして(架台取付部の実寸法に合わせて)組み立てます。左右に位置する五角形の「側面板」2枚を、上下2本の「補強材」で橋渡しする形になります。これも、まず木工ボンドで接着し(写真10-A)、硬化後さらに木ネジで固定します(写真10-B)。
この時点ではまだフレームは未完成ですが、次はカメラ微動機構を先に組み立てます。


フレームの組み立て
[4−4]カメラ微動機構の組み立て
カメラ微動機構の主要部材は「シフト板」と「ティルト板」です(写真11-A、11-B)。シフト板のおもて面に付いている3個の金属部品は、突張りビス(→図3)の先端による摩耗を防止する目的で取り付けた画鋲です。うら面は、シフト板とティルト板の各々に3個の爪付きナットを取り付けます。

シフト板(左)とティルト板(右)(おもて面)

シフト板(左)とティルト板(右)(うら面)
用いるwebカメラはロジクール製の C270nです(写真12-A)。同製品の背面に付いているスタンドは取り外します。手順として、まずスタンド基部のヒンジのゴムキャップを外すと、ビスの頭が現れます(写真12-B、12-C)。このビスを外すとプラスチック製のシャフトが抜け、スタンドを外すことが出来ます(写真12-D)。



webカメラ(ロジクール製 C270n)

次はwebカメラの取り付けです。webカメラの厚みに合わせて、数個のL字金具をペンチでZ字型に曲げます(写真13-A)。 webカメラのUSBケーブルをティルト板の穴に通します(写真13-B)。webカメラ1台ごとに、Z字金具4〜5個でティルト板に固定します(写真13-C)。



ティルト板をシフト板に取り付けます。ティルト板とシフト板のひと組ごとに、ティルト板微動ビスのペア(突張りビス+引張りビス)3組を用います(写真14-A、14-B)。仮組みとして、ティルト板はシフト板に対して平行、かつ間隔が9mmになるように、ティルト板微動ビスを設定します。これで、カメラ微動機構ユニットはとりあえずの完成です。


ティルト板のシフト板への取り付け
[4−5]仮組み・試験撮影・追加工
試験撮影です。カメラ微動機構ユニットを「正面板」にビス止めし、これをさらに小型のシャコ万力等でフレームに取り付けた仮組み状態で、適当な被写体のライブ像をモニターに表示させながら、カメラ微動機構を操作してwebカメラの位置と姿勢を調整してみます(写真15)。これによってステレオ画像が適切にキャプチャー出来たなら、各部材の寸法も組み立ての位置関係も問題ありません。仮組み状態からそのまま本組み立てに移れば良い訳です。しかし、もし問題があれば、部材の位置を調整しながら適切にキャプチャーできるところを見出し、その位置関係で組み上げられるように、追加工等で対処する必要があります。ちなみに本機の場合、正面板にある接眼レンズを覗かせる穴と、シフト板にあるシフト板固定ビスが通る穴を広げる、等の追加工を行いました。

[4−6]仕上げ
試験撮影と追加工を終えて、フレームの組み立て再開です。写真16は正面板の接着で、左眼側の正面板にある四角い2つの凹みは、Z金具との干渉対策としての追加工です。また、中央の焦げ茶色の部分は、正面板の継ぎ目を埋めるためのパテ(砥の粉と木工ボンドの混合物)です。はみ出した部分を硬化後にサンドペーパーで削れば、フレームユニットの完成です。

3種類のユニットが出来たので、改めて実体顕微鏡と組み合わせます。まず架台取付部ユニットを取り付けます(写真17-A、17-B)。




次にフレームユニットを取り付け(写真17-B、17-C)、そして左右のカメラ微動機構ユニットを取り付けます(写真17-C、17-D)。この後、改めて試験撮影(ライブ像表示)を行いながらカメラ微動機構を操作して、ステレオ画像がキャプチャーできることを確認します。そして再度分解し、防水のために木部に塗装(水性アクリルペイント)を施し、再々度組み立て・調整を行い、ようやく装置完成(冒頭の写真1)となりました。
[5]補足
[5−1]カメラ微動機構のはたらき
[5−1−1]位置調整と向き調整の大切さ
撮影装置の方式として本テーマで採用した「実体顕微鏡+コリメート方式」において、カメラの位置調整と方向調整は、とても重要です。というのも、位置調整ができないとカメラは実体顕微鏡像を捉えることができないし、仮にその像が捉えられたとしても、向き調整ができないと3Dイメージを構成できないからです。そのことを、以下に説明します。
今回製作した撮影装置のカメラ微動機構は、webカメラを x, y, z, θx, θy, θz の6軸方向に移動させられます(図4)。なお、本記事で言う位置調整とは x, y, z の3軸方向の直線移動を、向き調整とは θx, θy, θz の3軸方向の回転移動を、それぞれ指します。

それでは、コリメート方式においてカメラの位置や向きがキャプチャー像にどのように影響するかを見てみましょう。次に示す写真18-A〜18-Fは、スマホカメラの位置や向きを変えながら、実体顕微鏡像をコリメート方式で撮った画像です。
写真18-Aは、カメラの位置と向きが正しく設定された場合です。実体顕微鏡の丸い視野内が欠落やかげりなく一様に撮れています。また、丸い視野の中心と(カメラの)四角い視野の中心が一致しています。
写真18-Bは、カメラが正しい位置から ±x, ±y方向にずれた場合です。視野に非対称的な欠落やかげりを生じています。


写真18-Cは、カメラが正しい位置から-z方向にずれて接眼レンズに近付き過ぎた場合です。視野周辺部がリング状に欠落し、中心部のみが見えています。
写真18-Dは、逆に、カメラが正しい位置から+z方向にずれて接眼レンズから離れすぎた場合です。近付き過ぎた場合に似て、視野周辺部が欠落し、中心部のみが見えています。


写真18-Eは、カメラが正しい向きから±θx, ±θyまわりにずれた場合です。実体顕微鏡の丸い視野の中心と、カメラの四角い視野の中心とが、互いにずれています。
写真18-Fは、カメラが正しい向きから±θzまわりにずれた場合です。水平に写るべき被写体(物差し)が、傾いて写っています。


以上より、「実体顕微鏡+コリメート方式」において、左右のカメラが両方とも写真18-Aのように正しく設定されている必要がある、すなわち、左右のカメラが両方ともx, y, z, θx, θy, θz の6軸方向の調整ができる必要がある、ということになります。
[5−1−2]シフト板のはたらき
本機のカメラ微動機構において、シフト板には6軸のうち x, y, θz の3軸を調整するはたらきがあります(図5)。
シフト板は、長穴の穴幅がシフト板固定ビスの直径よりもひと回り大きいので、その遊びの範囲で左右(±xL方向)のシフト移動できます(図中(b),(c))。上下(±yL方向)のシフト移動も同様。また、長穴の長さの範囲で右回り・左回り(±θzL方向)の回転移動もできます(図中(d),(e))。なお、図に描いたのは左眼側のシフト板ですが、右目側もはたらきは同様です。また、実物に対して原理説明に不要な部分は、描写を省略しました。

[5−1−3]ティルト板のはたらき
本機のカメラ微動機構において、ティルト板には6軸のうち z, θx, θy の3軸を調整するはたらきがあります。
ティルト板は、「引張り」と「突張り」のビス2本よりなるティルト板微動ビスひと組ごとに、シフト板からの距離を設定できます。したがって、例えば図6のように上下ふた組のビスを備える場合、これらを操作することによって、±θx方向のティルト移動ができます((b),(c))。また、±z方向のシフト移動もできます((d),(e))。なお、図は原理説明のためにティルト板微動ビスはふた組、ティルト移動は±θx方向の1軸のみとしましたが、実物は同ビス3組を光軸を中心とした120°間隔の等分配置になっています(→写真1参照)。これにより、±θx方向と±θy方向の2軸のティルト移動が出来ます。また、実物に対して原理説明に不要な部分は、描写を省略しました。

[5−2]本テーマの過去記事
接写でタイムラプス3D動画 −①机上検討編− - もくもくカメラのブログ
接写でタイムラプス3D動画 −②実体顕微鏡+コリメート方式 の実験− - もくもくカメラのブログ
接写でタイムラプス3D動画 −③スライド絞り方式 の実験− - もくもくカメラのブログ
接写でタイムラプス3D動画 −④前回実験「スライド絞り方式の…」事前の準備を解説− - もくもくカメラのブログ
接写でタイムラプス3D動画 −⑤製作する撮影装置の方式を決める− - もくもくカメラのブログ
*1:「[3−2]架台への取り付け」参照